2012年3月19日月曜日

公認会計士試験合格者数がさらに削減へ


金融庁より、「合格者数は一層抑制的に運用されることが望ましい」という見解が発表されたとのこと。
会計士試験は2009年から始まった内部統制監査による業務拡大への対応として、2006年くらいから合格者を増加させてきました。ですが実際には、日本での内部統制監査ルールが米国よりも緩いものに誘導されたことや、リーマン・ショックによる企業業績悪化の影響もあって、想定していたよりも業務ボリュームが拡大しませんでした。そのため、業務拡大を見越して大量採用を行なっていた監査法人は余剰人員を抱えることとなり、新規採用を減らさざるを得なくなりました。
その結果、せっかく苦労して会計士試験をパスしたけれども仕事がない人が発生することになりました(「待機合格者」という待機児童みたいな言葉が生まれました)。会計士業界としては監査法人以外への就職の道を開くべく財務会計士という新たな資格をつくろうとしましたが、自民党の反対によって上手く行きませんでした。これらの背景を受けて、会計士試験の合格者数を減らすということになっているようです。
私は、こうした動きによって会計士業界が却って不健全な方向へ進むのではないかと思います。
そもそも、会計士試験というのは一定の品質を担保するために設けられた資格制度に基づく試験です。当たり前ですが、会計専門家として働くことができる水準にあるかどうかを適切に判定する試験であるべきです。合格者数はあくまで結果で、結果が先に決まることはナンセンスだと思います。受験者のレベルが非常に高い年には合格者が増え、そうでない年は合格者が減る。そういった状況になっているからこそ、資格制度が品質を担保できます。安易に会計士業界の労働需給をみて合格者数を決めることは、会計士制度そのものの信頼性を損なわせるのではないでしょうか?
また、合格者数削減による労働需給ギャップの解消は、待機合格者の問題をこれから会計士試験を志す方に負担してもらうことになります。このような状況に至ったのは会計士業界を取り巻く環境変化の影響が主要因ではありますが、業界の自助努力の欠如が全くないとは言えません。最近になって、大手監査法人はリストラの一環として一般事業会社への出向を始めました。ですが、会計士が社会に如何に貢献するかということを考えるならば、財務会計士をプッシュするより先にこうした動きがあって然るべきだったように感じます。
さらに、会計士業界全体のパフォーマンスを上げる上で、既存の会計士の雇用を守って待機合格者の発生を許容することが最善とは思いません。確かに、会計監査の仕事は経験やセンスが要求されますが、大前提として会計や税務の知識は不可欠です。経営環境が激変するなか、過去の経験の価値は徐々に下落しています。英語も読めず、IFRSについてこれない大御所よりも、最新の会計知識を一生懸命勉強してきた方々のほうが活躍できる領域は多いでしょう。
私は、合格者数を減らすよりも、会計士試験を免許更新制にするなり、あるいは思い切って定年制にするなりする方が、この業界がより良い方向にいくのではないかと思います。監査法人で経験を積んだ方が積極的に新たな領域に挑戦していく流れを促進させると思うからです。
私は前職にいたころ、TACの簿記1級講座で初めて会計士の授業を受けました。そのころ、会計士が何だかすごく優秀そうな人に感じ、こんな人がいる世界で働きたいと思ったものです。こうした思いを今持っている方々が、これから会計士にチャレンジできるような業界であって欲しいなあと思います。

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