2011年10月8日土曜日

会計士の輸出とIFRS

最近、アジア各国の会計士と意見交換する機会があった。東南アジアを中心に生まれ育った国と別の国で働いている人が多く、英語でビジネスを行うアジアの国々の中では人材流動化が思っているよりも進んでいるのに驚いた。最近はフィリピンから香港、マレーシアからシンガポールなど、大きなチャンスのある地域への移動が増えていて、マレーシアでは空洞化による会計士不足の兆しも出てきているようだ。

なぜ、そういった移動が可能なのか?一番大きいのは言語のハードルがないことだろう。だが、会計士という仕事の特性も流動化を後押ししていると思う。会計士の仕事は一定のルールに従って財務諸表が作成されていることを確かめる仕事なので、一定のルール(会計基準や監査基準)に対する理解があれば、異国であっても仕事の内容に根本的な違いはないというのは大きいと思う。

一方で、日本では上場企業が減って業界のパイが小さくなったことから、人余りの状況となった。ここ数年は会計士試験合格者が監査法人に就職できない問題も起こっている。会計士協会は一般企業への就職促進を模索しているものの、日本企業の空洞化が既定路線となりつつある中では抜本的な問題解決にはならないだろう。更に大手法人のリストラが行われる中で、日本の会計士が日本では食えない時代は近づきつつあると思う。

確かに、海外で働く上で英語は大きなハードルだ。だが、会計士の仕事はサービス業の中でも比較的英語環境で働く上で楽な部類に入るのではないかとも思う。基本的に数字と勘定科目の世界だし、専門用語もそれほど多くはない。私自身は監査法人に入ってから英語を勉強を始めたくらいなので、それほど英語が得意でもないが、海外出張で現地の責任者に英語でヒアリングする程度は何とかなるものだ。

それよりも、日本人の会計士が海外で働くためのハードルとして、会計基準の違いが大きくなってくるのではないかと思う。現状、EUと違ってアジア各国の会計基準は統一されていない。だが、発展途上国では自国の会計基準が未発達である場合が多く、IFRSを導入するメリットが大きい場合が多い。そのため日本の動きとは逆にアジア各国でのIFRS適用が進んできている。日本のIFRS適用が遅れると、それだけIFRSに基づく監査実務の経験を持った会計士の育成が遅れることになる。そうなると、(ただでさえ英語が弱い)日本人会計士の国際的な競争力が劣化してしまうのではないだろうか?

会計監査サービスだけではなく、会計システム構築や決算関連コンサルティングなどを輸出産業にしようと考えるのであれば、IFRS導入は2015年でも早すぎるということはないと思う。