2011年8月22日月曜日

東京電力の「事業等のリスク」

有価証券報告書には、投資家等の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を「事業等のリスク」として開示することになっている。東京電力の2010年3月期有報では以下のリスクが識別されていた。(以下抜粋)

(1)電気の安定供給
自然災害,設備事故,テロ等の妨害行為,燃料調達支障などにより,長時間・大規模停電等が発生し,安定供給を確保できなくなる可能性がある。その場合,復旧等に多額の支出を要し,当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性があるほか,社会的信用を低下させ,円滑な事業運営に影響を与える可能性もある。
 
(2)原子力設備利用率
自然災害や設備トラブル,定期検査の延長等により原子力設備利用率が低下した場合,燃料費の高い火力発電設備の稼働率を必要以上に高めることとなり総発電コストが上昇する可能性がある。また,CO排出量の増加に伴い,追加的なコストが発生する可能性がある。この場合,当社グループの業績及び財政状態はその影響を受ける。
 
(3)原子燃料サイクル等
原子力発電の推進には,使用済燃料の再処理,放射性廃棄物の処分,原子力発電施設等の解体を含め,多額の資金と長期にわたる建設・事業期間が必要になるなど不確実性を伴う。バックエンド事業における国による制度措置等によりこの不確実性は低減されているが,制度措置等の見直しや制度外の将来費用の見積額の増加,六ケ所再処理施設等の稼働状況,同ウラン濃縮施設に係る廃止措置のあり方などにより,当社グループの業績及び財政状態は影響を受ける可能性がある。
 
(4)安全確保,品質管理,環境汚染防止
当社グループは,安全確保,品質管理,環境汚染防止に努めているが,作業ミス,法令や社内ルールの不遵守等により事故や人身災害,大規模な環境汚染が発生した場合,当社グループへの社会的信用が低下し,円滑な事業運営に影響を与える可能性がある。
(※以下略)
さすがに「メルトダウンが生じるリスク」と言った表現ではないが、自然災害による大規模停電や原発利用率の低下などがリスクとして認識されていた点が興味深い。うがった見方かもしれないが、今の状況も想定されたシナリオの一つではなかったのではないかと思えなくもない。
個人投資家のうちどれだけの人が有価証券報告書を読んでいるかは微妙だが、2010年6月の時点で上記のリスクが開示されていた以上、東電の社債権者や株主はこれらリスクを踏まえて投資を行ったものと見做されても仕方ないだろう。

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