2011年7月24日日曜日

IFRS適用とはIFRSベースで帳簿を付けることなのか?

国際会計基準の強制適用が当面なくなる見込みとなった。
会計業界では盛り上がった適用可否の議論も一旦落ち着いて来た感があるが、議論の前にIFRS適用のイメージをもっと明確にすべきだったのではと思う。

通常、財務諸表は以下の手順で作成される。
① 日常的な経営活動(売上、仕入、経費支払など)に対して会計伝票を入力する。
② 入力した伝票を集計して、決算整理前の試算表を作成される(通常は会計システムで自動作成)
③ 決算修正仕訳(減価償却費の計上、引当金の計上、税金計算など)を入力する。
④ 決算整理後の試算表を開示する財務諸表に組み換えする。

IFRSを適用するということは、上記の①をIFRSベースで入力することによって作成することを意味しない。通常は③の後で従来の日本基準とIFRSの差異を入力する。もちろん①の段階でIFRSベースとすることで対応も可能であるが、日常的な処理の全てを変えるよりも決算処理だけが変更される方が、これまでの業務からの変動が小さく低コストで対応出来るからである。

また、この会計基準の差異調整は、ありとあらゆる差異を全て調整する必要はない。結局のところ、財務諸表は読み手の意思決定のための情報なのだから、情報に影響が生じない些細な差異まで調整する意味はないのだ。通常は金額的な影響が小さければ余程質的に重要なものでない限り調整対象にはなってこない。米国会計基準への調整などでも一般的である。

IFRSで財務諸表を作るということは、世界の様々な国がそれぞれの基準で作られる財務諸表を共通の基盤に乗るように翻訳する作業に近いものだ。それぞれの会計慣行や基準に従って作られ、様々な様式で開示される財務諸表は、処理方法や開示される情報で異なる部分があるため比較がしにくい。それを何とかするために共通言語を設定しよう、というのが元々のスタートだったはずだ。

細かい個々の基準の差異やIT投資や事務処理負担の議論ばかりが先行しているが、何か論点の順がズレているような気がしてならない。所詮は翻訳の世界なのだから、意味が通じるなら多少の誤訳があっても伝わればOKと割り切ることが何故できないのだろうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿