2011年4月24日日曜日

テレビディレクター 田原総一朗

文庫は絶版になっていて、アマゾンでは中古で2万円近くになっている小説。
アゴラブックスで電子書籍として復活してたので早速読んでみた。
http://www.agora-books.com/detail/000000000003001.jsp



少年院を出所した後の社会復帰をテーマにしたドキュメンタリーの顛末を描いたもの。文庫版は”小説”が付いていたが、時を経てノンフィクションとして再出版したようだ。商業番組のディレクターとしての立場と、ドキュメンタリーの製作者としての立場との葛藤が正直に描かれている。

客観的な第三者として向き合うのではなく、正面から対象にぶつかる姿を映像化する手法を職業として続けることに驚く。著者にとって番組制作は労働ではなく自己表現。その彼が当時盛り上がっていた労働組合との議論する場面の描写が印象的だった。

読後まず感じるのは、1960年代後半の熱さ。番組制作に関わる一人ひとりが哲学や美学を持っていて、延々と議論が続いてクドい位。一方で、熱い現場がうらやましい。

少年院では「シャバにでた後に、古い友人を捨て、過去を捨てる」こと学ぶ。それでも少年院を出た人間の多くは再び戻ってくる。テレビディレクターとして、そこに問題意識を見出すのは自然だと思う。でも、実際にはその思いを映像化する過程ですれ違いが生じる。

実際の番組を今では見れないので推測に過ぎないが、ドキュメンタリーの顛末を描いた本書と比べて、実際の番組はしょっぱい感じだったと推測する。リンク先の独白の方がこの本よりも迫ってくるものがあった。インタビュアーは黒子になって、独白のような形を撮るほうがよかったと思う。

http://blog.livedoor.jp/blog_ch/archives/50489867.html

0 件のコメント:

コメントを投稿