2011年11月9日水曜日

オリンパスの投資有価証券


オリンパスは巨額買収と専門家報酬の合理性の問題が一転して粉飾決算問題となった。一旦、反論の適時開示(一連の報道に対する当社の見解について)をやったことにより、却って手の込んだ損失隠しをやっていたことを伺わせる結果となってしまっている。マネジメントは損失隠しへの関与の有無だけではなく、ウッドフォード前社長の解任後の対応によって企業価値を毀損させたことへの責任も問われることになるのではないだろうか?

詳細なスキームについては会見でも繰り返されていたとおり、第三者委員会による調査結果を待つしかないだろう。ただ社長会見詳報によれば、

「円高になり、売り上げが伸びず財テクに走った時期があった。そのような時期に始まった」 
(資金が反社会的勢力などに流れた可能性について)「森氏の報告によると外部には流れていない」
との発言がある。ここからは当初取得時は正しく記帳されていた投資がその後の時価下落によって含み損を抱え、その損失を何らかの方法で補填されていたというストーリーが推測される。

HPで公開されている有価証券報告書を見ると、2000年3月期の単体付属明細表にて出資金として"GC NEW VISION VENTURES L.P"(以下①)300億円が記載されている。一方で、貸借対照表において出資金は200年3月期に表示変更によって区分掲記されている。前期には投資その他の資産「その他」に263百万円計上されていたとあるので、出資金300億円は2000年3月期に記帳されていたものと思われる。

また、有価証券勘定の中にには"LGT Portfolio Management (Cayman) LTD. Global Investable Market "(以下②)が152億円計上されている。有価証券勘定残高は前期から著変動がないことから、当有価証券は前期以前に取得したものと思われる。

その後、2005年3月期にオリンパスの有価証券勘定は大きく変動している。流動資産の投資有価証券勘定が2004年3月末の349億円からゼロとなり、投資その他の資産に含まれる投資有価証券勘定(出資金含む)は615億円増加している。付属明細表を見ると、この期から"Strategic Growth Asset Management SG Bond Plus Fund"(以下③)が602億円計上されていることから、増加は恐らくこの分であろう。これら①から③の各期の計上額は以下のとおりである。



(有価証券報告書より 単位:百万円)
               ①              ②           ③


2000/3月期 30,000 15,247
2001/3月期 30,907 15,118
2002/3月期 28,018 15,275
2003/3月期 25,603 15,380
2004/3月期 24,681 15,465
2005/3月期 23,985 15,591 60,243
2006/3月期         15,677 59,278
2007/3月期         15,834 60,263
2008/3月期         15,863 60,607
2009/3月期                 61,440
2010/3月期                 61,823
2011/3月期



2011年3月期にて附属明細表から残高はなくなっている。貸借対照表上の投資有価証券も、525億円中502億円が株式となった。

おそらく、この①~③が損失先送りスキームと何らかの関連を持っているものと思われる。第三者委員会によって解明されてくるとおもうが、監査上はこれらの投資評価をどのように行なっていたのか、というのが議論となるところであろう。

1 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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